「16時間」断食の元祖は、青木厚医師であることを最近知りました。著書の『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム、2019年)において、一日三食が理想でるという考え方は、確固たる裏付けはないといいます。一日三食にすると以下のような問題があるそうです。
- 胃腸をはじめ、内臓が十分に休むことができず、疲弊してしまう
- 体内で炎症が起きやすい
- 食べ過ぎを招き、肥満になりやすい
- 高血糖になりやすい
- 老化が進みやすい
日本で一日三食の習慣が広まったのは江戸時代ということ。武士や大工などの肉体労働者以外は一日二食が一般的だったそうです。その後、江戸時代に明かりが普及し、一日の活動時間が延びたからとか、明治維新後に政府が軍隊に一日三食を提供したので、一日三食が定着したなど諸説あるようです。
また、1935年に国立栄養研究所の佐伯矩医学博士が、一日に必要なカロリーを二食で摂るのは難しいので、三食に提唱したことも影響しているといわれます。
一方、青木医師が16時間の空腹期間にこだわるのは理由があります。何も食べずに16時間経過するとオートファジーが機能しはじめるからだそうです。2016年に大隅良典教授がノーベル賞を受賞したことで、オートファジーが注目されるようになりましたが、自ら(auto)、食べる(phagy)ということで「自食作用」ともいわれています。
私たちの体は、約60兆もの細胞でできており、その細胞は主にタンパク質でつくられています。日々の生活の中で、古くなったり壊れたりしたタンパク質の多くは体外に排出されますが、排出しきれなかったものは細胞内にたまっていき、細胞を衰えさせ、様々な体調不良を引き起こします。
一方、私たちは食べたものから栄養を摂取し、必要なたんぱく質を作っています。ところが、何らかの原因で栄養が入ってこなくなると、体は生存するために、体内にあるものでタンパク質を作ろうとします。そこで、古くなったり壊れたりした細胞内のたんぱく質を集めて分解し、それらをもとに新しくタンパク質を作ることになります。これがオートファジーの機能で、古くなった細胞を内側から新しく生まれ変わらせる仕組みといえます。このオートファジーを機能させるためには、最後に食べてから16時間ほど経過する必要があり、その空腹時間があることによってオートファジーが活発化するそうです。
青木医師によると、寝ている時間と、起きていて食べない時間の合計が連続10時間を経過すると体の脂肪の分解がはじまり、16時間以上になるとオートファジーが働きだすといいます。だから一日のうちに16時間食べない時間を確保することが重要だという提言です。夜の睡眠時間と昼食までの時間で16時間を確保するのが一番実行しやすいように思われますが、それぞれのライフスタイルによるでしょうから、自分なりの組み立てでオートファジーの機能を活用するのがよいかと思います。