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疲労を感じない工夫で生産性アップ

疲労感というのはどこからくるのでしょうか。そもそも、「疲労」と「疲労感」は異なるようです。私たちが疲れたと感じるのは、脳が感じていることで、必ずしも肉体の疲労と同じものではないということです。梶本修身『すべての疲労は脳が原因』(講談社新書、2016年)に、ある研究プロジェクトで調査した結果が紹介されています。たとえば、自転車こぎやジョギング程度の有酸素運動で筋肉はほとんどダメージを受けないそうです。それでは、運動時にもっとも疲れるのはどこか。その答えは、実は脳そのものにあったということです。

人は実際に疲労を起こしても、それを感じるのは脳であるため、脳の複雑な働きによって疲労感を覚えないことがあります。物理的な疲労の程度と、主観的な疲労感は一致しないということのようです。そして、「疲労した」という情報を収集して「疲労感」として自覚させるのは大脳の前頭葉にある眼窩前頭野(がんかぜんとうや)という部位になります。

また、疲労感のサインとしては、「飽きる」、「疲れる」、「眠くなる」があるのですが、飽きるというサインがわかりやすいので、実例を考えてみます。

たとえば、高速道路で長時間、自動車の運転をしていると、「飽きた」というシグナルが脳から発せられます。そんなときには、サービスエリアに入ってコーヒーを飲むなどして休息を入れる必要があります。そうしないと、眠気や判断ミスで事故が起こりやすくなります。

また、身近な例では、「飽きる」を無視して同じ仕事を継続すると、特定の神経回路が疲弊して機能低下し、全身がだるいなどの症状が現れるようになり、作業効率が低下することになります。よってその場合は、別の作業に移るほうが効率的なのかもしれません。

読書でも、同じ本を読み続けるのであれば、あるテーマの本で飽きたら、別のテーマの本に切り替えるというのも、実は効率が良いのかもしれません。複数の異なる分野の本を同時に読むと、頭が混乱するようにも思えますが、実はやってみると効率が良い可能性があります。

また、効率的な仕事には「ゆらぎ」が必要なこともわかっています。空調装置が完備されたオフィスで一定の温度や湿度に保たれた場所では「ゆらぎ」がありません。よって、場所を変えて仕事をすることも、意外に生産性を向上させる秘訣なようです。

疲れと脳の関係は複雑で、未解明の部分も多いのですが、いろいろ調べると、日々の生活の工夫でより良い結果をもたらすこともできるかもしれません。いろいろ試してみる価値はあるでしょう。

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