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必然的に「病人」をつくり出す人間ドック

「信じてはいけない! 健康診断 医者 クスリ」という特集記事が雑誌のプレジデント2022.10.14号にありました。その中に、健康診断の結果を信じてはいけないし、最新検査はお金が無駄になるかもしれいないという指摘があります。

東海大学名誉教授の大櫛陽一氏によると、人間ドックは日本特有のもので、海外では行われていないそうです。そして、人間ドックでは、何かしら体の異常を指摘されることが多いわけですが、それにはカラクリがあるといいます。実は多くの人が異常と診断される仕組みになっているのです。

すなわち、健常な人の各検査項目の値は、左右対称の正規分布になり、その中央から95%を占める部分を正常としています。残りの上位と下位のそれぞれ2.5%の合計5%が異常とされることになります(下図参照)。よって、検査項目の多い人間ドックでは、誰もが結果的に項目のどれかで異常とされる確率が高まるわけです。

健康診断が日本人の健康意識を高めるために存在しているのならいいのですが、人間ドックが病人をつくり出している可能性に十分留意する必要があります。本来であれば薬が不要な人が薬を処方されたり、不必要な食事制限を強いられたり、余計な治療をさせられている可能性があるということです。

実のところ、日本人間ドック学会は、2015年まで毎年「人間ドックの現況レポートを発表していました。15年版では、人間ドックを受けた人のうち、異常なしが男性で4.7%、女性で6.8%となっていました。しかし、その数値があまりにも実態とかけ離れ過ぎた異常値ではないかと指摘されて、それ以降は発表をやめてしまったそうです。人間ドックを受ければ、約95%の人は異常とされ、病人扱いにされていまうという、そのような人間ドックは、どのような意図で行われているのでしょうか。

おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹慎一郎氏は、究極的には、お金を払ってまで人間ドックを受けなくても、最低限、健康診断をしておけばいいと助言します。当然見逃しもあるかもしれませんが、100%を目指すことで、結果的に体にも負荷をかけるムダな検査をたくさん受けなくてはならないからです。

労働安全衛生法では企業に対して、従業員に年1回の定期健診を受けさせることを義務付けしていますが、従業員側は、あえて人間ドックではなく、普通の健康診断に切り替えるのも一つの案です。人間ドックが必然的に病人を増やしているという実態をまずは知っておき、それを踏まえて自分で判断していくことが必要だと思います。

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