欧米の死亡原因のトップは心筋梗塞
その原因は長らくコレステロールと考えられてきました。心筋梗塞は、心臓の周囲を取り囲んで、心筋に栄養を送っている冠動脈が詰まることが原因となっています。この部位の血管を解剖して調べてみると、コレステロールが多く含まれていたため「コレステロール悪玉説」が信じられてきました。その辺の経緯は、大櫛陽一『コレステロールと中性脂肪で、薬は飲むな』(祥伝社新書、2008年)に詳細に記述されています。
コレステロールは炎症を修復してくれる
しかし現在では、心筋梗塞の本当の原因は血管の炎症であり、コレステロールは炎症を修復してくれていることがわかりました。20世紀の終わりごろまでは、すべての医師が脂肪の多いドロドロの血液が血管壁にへばりついて塊(プラーク)を形成して、血管を詰まらせると信じていました。しかし、それは20年以上にわたる研究で誤りであることが判明したのです。
この原因は「血管の炎症」です。炎症とはケガや腫れ物が赤く腫れた状態で、炎症は傷口や病気の治癒に必要な過程です。体の免疫がウイルスや細菌と戦っている状態で、この戦いが一段落すると細胞が修復され、この時に細胞膜の原料であるコレステロールが必要なのです。よって、心筋梗塞を起こした冠動脈にコレステロールが多く発見されるわけです。
ある意味で、自分の健康は自己責任
いってみれば、火事場に駆け付けた消防隊自身が、放火犯だと勘違いされたようなものです。しかし、日本の医学会は、この誤りを受け入れることを潔しとしないようです。いまだにコレステロール悪玉説が幅を利かせています。そして、実際に男性でも女性でも、LDLコレステロール値が高い方が、死亡率が低い傾向にある実験結果について明快な説明がなされていません。
このような点を考えると、医学的知識の不足している患者も、やはり自分で調べるクセをつけ、医師に「お任せ」とならないように気をつけなければなりません。ある意味で、自分の健康は自己責任だといえるのでしょう。