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遺伝子組換え食品を考える

遺伝子組換え食品はなぜ必要なのでしょうか。

遺伝子組換え技術を利用して遺伝的性質を変えた作物は、害虫や除草剤に対して強い耐性を持つことができます。そのため、生産効率が上がります。

たとえば、強力な除草剤を撒いたことにより雑草が除去できます。一方で作物は害を受けないように遺伝子組換え技術を用いれば、生産性は上がるわけです。雑草をいちいち処理する手間が省けます。

しかし問題は、その遺伝子組換え作物を人間が食べて健康被害は発生しないのかということは、長期的にはよくわからないということだと思われます。究極的には、農作物の生産効率を人間の健康より優先させることを受け入れるのかという問いになるのではないでしょうか。

山田正彦『売り渡される食の安全』(角川新書、2019年)によると、アメリカのアイオワ州の養豚場で、子豚が生まれなくなった原因を調べた結果、餌としていた遺伝子組換えトウモロコシが与えられ続けていたことが原因ではないかとわかりました。そして、通常のトウモロコシに代えたところ、子豚の出生率が改善されたとされています。

また、遺伝子組換え食品の危険性に関する学術論文が発表されても、後で取り下げられたり、執筆者に対する誹謗中傷がなされたりすることもあるので、遺伝子組換え食品に対する危険性が周知されず、そのようなリスクに対して無防備になりがちになります。人間が口にするものですから、慎重すぎるくらいに警戒しても悪くありません。

このような遺伝子組換え食品に関して、アメリカの消費者の間ではかなり警戒感があり、“NON GMO”と表示された食品がとても人気があるということです。“Non-Generically Modified Organism”のことで、すなわち非遺伝子組換え食品になります。表示に関しても非常に厳格です。同じくヨーロッパ、特にEUでも表示は厳格です。また、オーガニック食品は人気があります。たとえば、フランスでも“BIO”、すなわち、オーガニックを意味する“Biologique”の食品は人気があります。必ずどこのスーパーにも“BIO”のコーナーが設置されているものです。

このように、アメリカやヨーロッパの消費者は意識が高いことに比較して、日本の消費者が無頓着であることが気になります。遺伝子組換え食品の安全性に関して確信が持てない現状では、消費者としては声をあげることが大切であることと、一人ひとりの購買行動から意思表示をしていく必要があります。黙っていると企業は利益を優先するし、行政は安全性を軽視した対応を取りかねません。この点、注意深く状況を見極めていかないと、様々な法律や規制が消費者に不利に、企業に有利に変えられていきますので、私たちは意識を高め、日々学ぶことが必要だと思います。

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