呼吸を行うのは肺です。そしてそれを取り巻く肋骨や肋間筋で構成される胸郭、さらに肺の下部にある横隔膜、これらが連動して呼吸が営まれます。打越暁『いのちの力を高める9つの呼吸法』(文芸社、2013年)によると、肺自体は直接自力で動かせませんが、この胸郭は自力で動かすことができ、また、横隔膜や腹筋を動かすことで、間接的に肺を動かすことができるといいます。
打越医師は、呼吸器科が専門ですが、生命維持に不可欠な他の臓器、心臓も、胃も、腸も、肝臓も、腎臓も、このように自分で動かすことができないのに、肺はできるということで、その点に興味をもったそうです。そして、呼吸法は神様がこっそり教えてくれた究極の健康法だといいます。
具体的な呼吸法は、人それぞれにスタイルがあっていいといいますが、基本はいくつかあります。まず、息を十分吐くことは、呼吸法を行う上で一番大切になります。十分吐かないと吸えないということ。そして、ゆっくり時間をかけて息を吐く行為は、自律神経の働きを調整してくれます。息を吐くという行為は、特に自律神経のうち副交感神経を刺激し、逆に息を吸っていくと交感神経を刺激します。たしかに、忙しい時とか、焦っている時に、深呼吸しろといいますが、気持ちを落ち着ける効果はあるでしょうね。
そして、呼吸法のリズムですが、自分に合ったリズムで良いそうです。ただ、迷うのであれば、吐く10秒、吸う3秒、止める2秒くらいからはじめてくださいとのことです。慣れてくればそれぞれの時間を長くするようにして、最終的には1分間に2、3回できれ理想だそうです。
また、鼻で呼吸をすることが基本で、鼻は鼻汁の分泌や鼻毛によって、大きな異物を取り除くフィルターの役目があり、空気の浄化という点で優れているからになります。口呼吸は、運動時などのように、短時間で浅く速い呼吸に向いています。よって、口呼吸は緊急時の呼吸と考えたらよいようです。
人生を明るく、前向きに生きる、誰でもそう思いたいところですが、なかなか難しい。頭で考えてもできないことこともありますが、呼吸という体の生理機能を生かすことで、比較的に幸福感を容易に得られる呼吸法というのは、やはり究極の健康法なのかもしれません。
(参考文献)いのちの力を高める 9つの呼吸法(文芸社・打越 暁)