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「バラスト水」が環境に与える影響

船舶に必要不可欠な「バラスト水」という言葉をご存じでしょうか?

今回はバラスト水と、バラスト水が環境に与える影響についてご紹介します。

バラスト水とは?

バラスト水とは、船舶の安定性や浮力を調整するために船底のタンクに入れるバラスト(重石)のことです。

バラスト水が無いと船舶は重心が高くなり、傾きやすくなります。

また、船舶の重量が軽くなるため浮力が大きくなり、船体が水面から浮き上がりすぎる可能性があり、転覆や沈没の危険性が高まりますので、バラスト水は船舶の適切な運航に必要不可欠なものです。

貨物船のバラスト水

貨物船が空荷で出港する時、その港の海水が積み込まれ、貨物を積載する港で船外へ排出されるます。

例えば、貨物船が空荷の状況で日本を出航する際は日本の海水を積み込み、韓国に寄港し荷物を積み込む時には日本で積み込んだ海水を韓国で捨てるイメージです。

しかし、このバラスト水には、出発地の海域に生息する微生物や有害物質が含まれている場合があり、目的地の海域に放出されると、環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

環境への影響

例えば外来種の侵入、生態系の破壊、人間の健康被害などへの影響が懸念されます。

では、実際に発生した事例についてご紹介します。

 ①クシクラゲ

 1982年に北米原産のクシクラゲがバラスト水により黒海に侵入し、アンチョビの生息数に影響を与えたとの報告があり世界的に注目され始めました。

②ゼブラ貝

 1988年には本来欧州に生息しているゼブラ貝が北米の五大湖周辺の内陸水域で異常繁殖し、発電所の冷却水の取水口を詰まらせてしまい、発電所を停止させた事例も有名です。

③有害プランクトン

 1997年長崎県の福江島で牡蠣を食べて 16 名が 重症、原因は食中毒とみられ嘔吐・下痢・ 発熱などの症状が発生。

 しかし牡蠣は新鮮で 、かつ、熱処理を施されたものであり、長崎大学の調査によると、牡蠣が有害プランクトンを食べてその 毒が蓄積していた可能性があるという調査結果が出ました。

 この有害プラ ンクトンは通常、日本には存在せず、バラスト水によ り日本に持ち込まれたものだという見方が強く、日本船のバラスト水を調 査した結果、2 種類の有害プランクトンが検出されました。

対策

このような問題を防ぐためにはバラスト水の管理や処理が必要です。

国際海事機関(IMO)は2004年にバラスト水管理条約を採択し、2017年に発効しました。

この条約では、バラスト水の交換や処理を義務付けるとともに、バラスト水処理装置の設置基準や検査方法などを定めています。

日本では、2019年にバラスト水管理法が施行され、IMOの条約に準拠した規制が行われています。

バラスト水が環境に与える影響と対策は、海洋保護や生物多様性の観点から重要な課題です。

船舶業界や政府だけでなく、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、適切な対応をする必要があります。

■参考文献

 外務省HP https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/imo/

 環境省HP https://www.env.go.jp/water/oean_disp/post_70.html

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