現代の栄養学の教科書をみると、糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質が三大栄養素で、生活習慣病を予防するためには、脂質の比率を25~30%に抑えるべきで、炭水化物は60%前後と、もっとも多く必要。「炭水化物:タンパク質:脂質」の比率は、「3:1:1」が望ましいということが書かれています。
しかし、夏井睦『炭水化物が人類を滅ぼす』(光文社新書、2013年)によると、現代栄養学に大きな誤りがある可能性が浮かび上がります。実際に多くの臨床において、糖質を摂取しなくても人間は普通に生活できますし、それどころか、肥満や糖尿病、高血圧、高脂血症も治ってしまい、どんどん健康になっていくことが確認されています。
厚生労働省と農林水産省が公表している「食事バランスガイド」には、一日にご飯なら中盛り4杯と明記されています。この程度であれば普通ではないかと思えますが、実は糖質を角砂糖に換算すると、約28~38個にもなります。ご飯4杯は食べられても、角砂糖を38個食べることはかなり難しいでしょう。気持ちが悪くなる人がほとんどだと思います。
なぜご飯であれば食べやすいのかというと、デンプンのおかげだそうです。デンプンはよく噛めば、唾液のアミラーゼがそれを分解してブドウ糖を変化させ、ほんのり甘くなり、その甘さは砂糖に比べれば、「そういわれれば甘いかな?」程度だからだそうです。私たちの味覚からすると、パンもうどんもご飯も、むしろ甘みのない食べ物として分類していると思います。
そして、この公表されている食事バランガイドに根拠があるのかというと、国立健康・栄養研究所が、日本人の平均的な食事を調査して、その平均値を算出したものをベースに作られたもので、科学的根拠はないそうです。
夏井氏はたとえ話で、この事実を次のように説明します。たとえば、「中学1年生は学習内容を理解するためには、毎日自宅で2時間勉強すべきである」と推奨すべきところ、「中学1年生にアンケートをとってみたら、毎日自宅で30分しか勉強していない生徒が多かった。だから勉強は30分がよい」と提言しているようなものだと。
意外にも科学的根拠のないガイドラインなわけですが、たしかに、これだけ多くの人が生活習慣病に悩まされ、一向に改善していない状況をみると、どこかに誤りがありそうなことには気がつきます。ガイドラインというぐらいなので正しいと思いがちですが、必ずしも科学的な裏付けがあるとは限らいないということを知っておくことも大切かもしれません。