今はインターネットなどで知りたい情報を検索するとすぐに入手できます。ときには、判断できないほど大量の情報であふれてしまうこともあるでしょう。そして、正しい情報と、不確かな情報、かなり怪しい情報などあり、複眼的に検証しなければ、自分で誤った解釈をしてしまうこともあります。
こうした情報過多時代に必要になるのが、物事の本質を見抜く力になります。それにはまず、自分がみている情報が正しいのか、自分が常識だと思っていることは本当に普遍的なことなのかなど、自分の頭で考えて判断する必要があります。
石川一郎『いま知らないと後悔する2024年の大学入試改革』(青春出版社、2021年)によると、2020年の大学共通テストでは、どの教科も問題文が長めで、二つの文章を見比べたり、図や表から情報を読み取ったりするなど、読解力を求める問題が多く出題されたということです。こうした問題を出す背景には、複数の情報から正しい情報を読み取る力、すなわち今の情報過多社会に必要な力が身についているかを判断しようとする意図があります。
私たちが学校で学んだスペインの宣教師であるフランシスコ・ザビエルに関する問題で、過去の問題例と、これからの新しい問題例について、石川氏が次のような例を示してくれます。
【過去の問題例】
「(ザビエルの肖像画をみて)この人の名前を答えなさい」
「ザビエルがしたこととして正しい選択肢を選びなさい」
「ザビエルがしたこととして正しい選択肢を選び、年代順で並べなさい」
【新しい問題例】
「もしあなたが、ザビエルの布教活動をサポートするとしたら、ザビエルに対してどのようなサポートをしますか」
「もしあなたが、ザビエルだとしたら、布教のために何をしますか。」
「もしあなたが、ザビエルのように知らない土地に行って、その土地の人々に何かを広めようとする場合、どのようなことをしますか」
比べてみると明らかですが、暗記よりも自分で考えて記述する問題に変わっています。そして重要なことは正しい答えは一つではないということです。昔、「いい国作ろう鎌倉幕府」と幕府の成立時期を暗記した人が多いと思いますが、今は諸説あるのでそのような覚え方はしません。このように、日本の教育も変わりはじめています。冷静に考えると、過去の丸暗記による学習はいい部分もあったのでしょうが、実社会ではあまり有用ではないという反省があるのでしょう。教育の世界もこれから徐々に良い方向へ変わっていきそうです。