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病気の早期発見・早期治療は必要なのか

病気は早期発見・早期治療がベストなのか疑問に思うことはありますか。まるでスローガンのように聞く機会が多い、早期発見・早期治療ですが、実は必ずしもそれが正しいといえないケースもあるようです。雑誌のプレジデント2022年10月14日号によると、医学の世界では、実はエビデンスがないのではないかという懐疑論があるのだそうです。

がん患者の中には、もし検診でがんと診断されず、治療しなかったとしても一生涯、何ら症状を示さなかったはずである人が一定数いるそうです。がん診断のメリットを否定するわけではないものの、過剰診断によるデメリットも正しく評価しなければならいません。

実際にアメリカのデューク大学の調査によると、50歳から74歳が対象のマンモグラフィ検診で見つかった乳がんのうち、すぐに治療しなくてもよい進行の遅い前臨床がん、死亡原因にならなかったと推定される進行性前臨床がんが、計15.4%を占めたそうです。ということは、乳がん患者の7人に1人が治療を受けるメリットがなく、「過剰診断」だったということになるわけです。

また、先端的な検査方法も注目されており、がんが正常細胞よりも糖分を大量に取り込む性質を利用して全身を調べ、ごく初期のがんでも見分けられるPET-CTという検査があります。しかし、ある内科医によると、微小ながんまで見つけると、過剰な検査や治療につながる恐れが大きいので、検診ではおすすめしないということです。

さらに、線虫がん検査というのもありますが、がん患者をがんと判定する正解率の感度は86.3%、健常者をがんではないかと判定する正解率の特異度が90.8%とされます。感度86.3%とというのは、がん患者なのにがんではないと判定される人が13.7%いることになります。また、がんと判定されても、がんの部位や種類が特定できないそうです。よって、追加の精密検査が必要になり、過剰検査につながるそうです。さらに、特異度90.8%ということは、がんではないのにがんと判定される人が、約10%発生してしまうということです。

それにしても、がんでもないのに、治療がはじまっては大変ですね。このように検査をして病気を発見し、さらに細密検査でコストがかかり、治療も開始されてしまうという悪循環が現代医療にはあるということも頭のどこかに入れておく必要がありそうです。

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