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外食産業が優先しているものは「味」ではない

パンデミックのせいで、多くの人が外食する機会が減ったと思います。その分、家庭で料理をする機会が増えた人もいることでしょう。そして、久々に外食をすると、なんか不自然な味に違和感を覚える人もいるのではないでしょうか。

食品業界を知り尽くした専門家の河岸宏和『「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。』(東洋経済新報社、2014年)によると、食品には次の三つの要素が必要だと指摘します。

① おいしいこと
② 安全であること
③ 機能があること

ここでいう機能というのは、栄養や嗜好を満たすなど、食べる人が得られるメリット全般のことになります。

ところが、今の外食産業で最も優先されているのは、「安さ」と「安全」だけだそうです。安くて安全であれば、「味」は二の次でいいというのが基本にあるようです。プロの視点からは、「味」の軽視は著しいということのようです。

たとえば、有名なファーストフード店では、食中毒はまずでないそうです。それは衛生管理がほぼ完璧になされているからです。生野菜は消毒剤(次亜塩素酸ソーダ)の入った水で過剰なほど洗ってから使われます。だから世界中どこえ行っても安全なのです。

安さが売りの居酒屋チェーン店で出されるメニューは、ほとんどが海外でつくられて真空パックや冷凍で運ばれてきたものです。そして、長期間輸送するので、菌が繁殖しないように過剰ともいえるほど加熱がなされます。こういう食べ物には、おいしさも栄養も残っていません。おいしさという「機能」は抜け落ちてしまうのです。

味が落ちた分を後付けで補うのが、調味料と添加物です。特に多用されるのが油と砂糖です。これをたっぷり入れれば、何とか味をごまかせるからです。その結果、外食産業は力を失ったといわれます。

そのような外食産業でも、河岸氏の目から見て、おすすめのお店はあるそうです。そのようなお店は、総じてきれいで、仕入れにも料理にも手間がかかっており、作り置きなどもなく、職人が活躍しているお店のようです。おいしい店を見抜く極意などもあるので、せっかくの外食時には活用したいものです。いずれにしても、外食産業といえども食文化というのは大切なものなので、次の世代に継承できる工夫が必要なのかもしれません。

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