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「現在(いま)を生きている幸せ」

『芝生』

そして私はいつか

どこかから来て

不意にこの芝生の上に立っていた

なすべきことはすべて

私の細胞が記憶していた

だから私は人間の形をし

幸せについて語りだしさえしたのだ

_谷川俊太郎

今回「現在(いま)を生きている幸せ」をテーマにして記事を書くにあたり、著・谷川俊太郎さんの「幸せについて」という本をご紹介したいと思います。

皆様は、「幸せ」について考えたこと、悩んだことはありますか。

現代の社会を生きている私たちには頻繁につきまとう話題なのではないでしょうか。

2020年9月9日、ユニセフは先進国の子どもたちの精神的・身体的な健康と、学力・社会的スキルについて調査報告書を発表しました。日本の総合順位は38ヵ国中20位。なんともいえない微妙な順位ではありますが、注目すべきはその内訳です。身体的健康(子どもの死亡率の低さ・過体重・肥満の子どもの割合の少なさ)が1位、スキル(読解力・数学分野の学力、社会的スキル)が27位、そして精神的幸福度(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率)が37位でした。

身体的健康は1番目なのに対し、精神的幸福度は下から2番目。この結果を見て、皆様はどのように感じるでしょう。

筆者は、この結果を見てこの現状に納得してしまいました。

決して結果を「良い」と感じたのではなく、「やっぱりそうなんだ」と腑に落ちたのです。

ただ生きていく分には十分なものはそろっているのに、それに反して幸せだと感じられない子どもがたくさんいるのです。ここ最近は10代の凄惨な事件も多く、胸が痛みます。

原因としてはたくさんあげられますが、筆者の個人的な考えでは、日本人の「自己責任的な考え」や「学力という尺度に偏りすぎていること」、「核家族化・少子化による保護者の子どもに対する過度な期待や過保護による自己肯定感の低下」などがあげられるのではないかと思います。

では「幸せ」とは、何なのでしょう。

谷川俊太郎さんは、「「幸せ」について、はっきりと定義できるものではないが、この本ではあえて、ぼくがいま考えている「幸せ」について、言葉で探ってみようと試みた」と書かれています。とても抽象的で、観念的で、スケールの大きな話です。そして「幸せ」とは、外側から受け取るものではなく、内側から湧き出てくるものであり、外側は「幸せ」を感じるための理由に過ぎないのだと言います。

きっと身の回りに「幸せ」と意味づけできる理由になるものは溢れているけれど、「幸せ」そのものが湧き出る内側の「何か」が足りないのかな、とも考えます。その「何か」は「経験」なのかもしれないし、「自己肯定感」なのかもしれない。それは人それぞれと言ってしまえばそれまでですが、本当に人によって違うものなのでしょう。

「初めに自然に幸せがあった。不幸せはその後の不自然な人間社会から生まれた。」

この言葉も谷川俊太郎さんの言葉ですが、「幸せ」とは言葉に過ぎないのだと思います。「もし幸せというコトバがなかったら、ヒトは不幸せになることもなかったかもしれない。」とあとがきにも書かれている通り、言葉には表裏があります。「幸せ」という言葉とその裏の「不幸せ」とを作った、人間特有の概念です。家でゆっくりと寝転んでいる猫にも、元気に走り回る犬にも、言語はありません。しかし、私たち人間の概念で彼らの行動を意味づけるならばそれは「幸せ」なのでしょう。

ここからは筆者自身の個人的な考え方ではありますが、「幸せ」について思考を巡らせてしまっているときって、たぶん幸せではないのです。先述した日本人の子どもの精神的幸福度(生活満足度が高い子どもの割合・自殺率)が低いというのも、勝手な想像でしかありませんが、「幸せ」について深く考える子どもの数にも比例しているのではないかと考えます。

けれど、それは決して悪いことではなくて、懸命に生きることを模索している証拠だとも思うのです。その一人ひとりの子どもたちの苦悩を社会で支えることができたなら、一緒に悩んで考える大人たちが子どもたちに寄り添うことができる社会であるならば、精神的幸福を考えなくてもいいほどに「生きること」ができるのではないでしょうか。

最後に、今回の参考文献である『幸せについて(著:谷川俊太郎)』の少しほっこりする見出しを紹介させていただきます。今回の記事をきっかけにこの本を手に取っていただくことがあれば、筆者としてもとてもうれしく思います。

「幸せを忘れている幸せ」

「りんご一個…見てるだけで幸せ」

「水はひとしずくだけでも幸せ」

「幸せなんてコトバ(ホントは)要らない」

「ひとりの幸せ

ひとりじゃない幸せ」

「大きな幸せより深い幸せ!」

「幸せは時に行儀が悪い」

ユーモアもあって、そして静かで優しい。そんな谷川俊太郎さんの世界観に触れてみるのも、現代社会に疲れてしまったときは読んでみるのもいいかもしれませんね。

現在(いま)を生きることって、時に難しい。そんな「現在」を実感できるような日々を、少しでも多くの人が送ることができたらいいと思います。

参考文献:「幸せについて」著・谷川俊太郎(株式会社ナナロク社)

参考資料:https://www.unicef.or.jp/report/20200902.html(ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果)

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