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LGBTを学ぶこと―大きな誤解をしているかも―(前編)

「LGBT」と言われて、正しく説明できますか?

 「LGBT」または「LGBTQ+」という言葉は、最近よく耳にする機会が増えてきました。

皆様は、LGBTを説明することはできますか?「性的マイノリティ」と単語として一緒くたに言うのではなく、分からない人にもしっかり説明できるでしょうか。「LGBTの人」と「そうではない人」と分けて考えている方もいらっしゃると思います。あるいは、「自分の周りにそういう人がいるから自分は差別も偏見も持っていない、だから大丈夫」という方もいるのではないでしょうか。なんとなく、「我々とは違う人たち」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ちなみに、筆者は前述したとおりに考えていた時がありました。しかしこの考えは大きな危険を孕んでいるのです。「良心だけの理解」だけで、正しい知識を持っていなければ、これらは差別へとつながっていくのです。一緒にLGBTの定義や正しい知識を学び、現代社会の問題として具体的に理解していきましょう。

 今回参考にしていく文献は、著者森山至貴さんの『LGBTを読みとく』です。非常にセンシティブなテーマであり、詳しく説明していきたい部分でもありますので、記事を前編と後編に分けてお届けしたいと考えております。ぜひ前編と後編共に読んでいただければと思います。

性的指向と性自認

 まず、LGBTの定義から見ていきましょう。

著者は、LGBTの中でも、2つに分けるところからがスタート地点であると述べます。それは「性的指向」と「性自認」です。この二つを分けて考えていきましょう。

わかりやすい性自認から考えていきます。性自認とは、「自分の性別をどう認識しているか」ということです。例えば、「生物学上は男性で生まれてきたが、自分としては女性であるという意識を持っている・女性として生まれてきたが、自分としては男性である」など、自身の性自認が一致しているのか、または一致していないのかという分け方ができるものです。最近よく耳にすることが増えた「トランスジェンダー」という言葉は、性的指向のことではなく、性自認において不一致である人のことを言います。誰を好きになるかは関係ない言葉であることを理解しておきましょう。さらにトランスジェンダーのなかでも3つに分けることができます。

一つ目は身体の性別と性自認の不一致である「トランスセクシャル」、二つ目は服装と性自認の不一致である「トランスヴェスタイト」、三つ目は身体や服装は変えないものの、意識としては不一致であることを自覚して生きていく狭義での「トランスジェンダー」です。この三つを合わせて「トランスジェンダー」と呼びます。難しいと感じるかもしれませんが、一つずつ確認してみましょう。

性的指向とは、異性・同性・両性から自身の恋愛対象、性的対象の性別を分けていくものです。女性同士の性的指向を持つ人が「レズビアン」、男性同士を「ゲイ」、両方の性を対象とする人を「バイセクシャル」と呼びます。現在様々な呼び方がありますが、「レズ」や「ホモ」は差別的要素を含む言葉でもあります。

ですので、言葉として呼ぶ際には「レズビアン」、「ゲイ」とすることを知っておくことも大切です。なぜこのようにLGBTに関連する言葉がたくさんあるのかというと、これまであったたくさんの差別との格闘の歴史があるからなのです。後編では、現在の分類の仕方に至るまでの歴史をメインにご紹介させていただければと思います。これらを踏まえ、前述した通り、著者はこの二つの「性的指向」と「性自認」を分けて考えることを重要な最初の段階としているのです。

 この二つをきちんと分けたうえで考えることができるのが、「性的指向」と「性自認」の組み合わせです。組み合わせはきっと皆さまが思っている以上にたくさんあるのです。「LGBT」よりもはるかに多くなります。

人は100人いれば100人違っているのが当然ですから、今ある分類にすべての人間をきっちり分けられることは不可能でしょう。私たち人間というのは多様です。何度も繰り返すようですが、この複雑さがあるということを理解しておくことが何よりも大切であることを知っておきましょう。

メディアを鵜呑みにしないこと

 ここまでLGBTの概念や現在地点について紹介していきましたが、皆様はどう考えますか?

LGBTに関しては現在においても差別や誹謗中傷がたくさん起こっており、さまざまなメディアで取り上げられていますよね。ではそのメディアはどうでしょう。取り上げられ方によっては差別を助長させてしまっているように思います。特にマスコミは、「オネエ」や「ニューハーフ」という言葉を多く取り扱い、一時期はブームを起こしていました。これらは私たちの正しい理解を阻害してしまっている可能性もあるのです。メディアの情報をすべて鵜吞みにしないこと、情報社会であるからこそ自分はどうあるべきなのかも一度立ち止まって考えてみませんか?

次回の記事ではLGBTの歴史的背景を紹介させていただきます。前編と後編どちらの記事もぜひお読みいただければと思います。

参考文献:『LGBTを読みとく クィア・スタディーズ入門』(筑摩書房)著者:森山至貴

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