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見えづらい日本の子どもの貧困

2010年から低所得の子どもたちを対象としたキッズドアという無料学習会をはじめた方がいます。

この会を主催している渡辺由美子氏は『子どもの貧困』(水曜社、2018年)という本を出版し、実態を説明してくれます。それによると、日本の貧困層にいる子どもたちは見た目ではわからないといいます。身なりも普通ですし、スマホも持っていたりするので、日本の子どもたちの貧困は「見えづらい」のです。

あるとき、この学習会に通っている中学3年生が、「今日のお昼代の予算は100円だ」といったそうです。本人にとっては特別恥ずかしいことでもなく、普通のことだったそうです。いまどき、100円でコンビニのおにぎり一つ買えませんが、彼は10円とか20円の駄菓子を予算内で買い、それで昼を済ませたそうです。当然午後の勉強には集中できません。

当初、渡辺氏は、塾代が高くて塾に行けないというのは教育費の問題だと思っていたそうですが、実際には生活全般に不都合が生じるくらい窮乏している家庭があることに気がついたそうです。年収でいうと手取り150万円くらいで、いろいろ引かれて月に残る金額は10万円程度という家庭が多いようです。そこで、フードバンク事業を行っている団体に協力を仰ぎ、まずはおやつを出すことからはじめたそうですが、テレビコマーシャルで観るお菓子を食べるのがはじめてという子もいたということでした。

これが日本の現実なのです。かつては一億総中流といわれた時代がありましたが、日本の社会に深刻な貧困が広がっているという事実をまずは受け止めなければならないでしょう。まずはそこからスタートです。私たちにできることは限られています。あまりにも貧困にフォーカスしすぎるのも問題です。ただ、そのような現実が自分と同じ空間に存在しているということを頭の片隅に置き、自分の手の届く範囲で行動していくことが必要かもしれません。

<参考書籍:『子どもの貧困』(渡辺由美子、水曜社、2018年)>

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