昔は「苦学生」という言葉がありました。今はもっと深刻な「貧困学生」といってもよいのかもしれません。大学に行けば専門分野のことを学び、将来その知識や経験を生かして社会で活躍する。しかし、これは本当に夢か幻なのかもしれません。
仕送り額は約4万円も減少
東京私大教連が2019年に実施した首都圏の私立大学に入学した新入生の家庭を対象にしたアンケート調査によると、実家からの学生への仕送り額は8万5,300円でした。過去最高であった1994年の12万4,900円と比較すると、3万9,600円も減少しています。
一方、家賃の平均は6万3,400円なので、その差額の残りの生活費は2万1,900円です。これを30日で割ると一日あたり730円ですが、これでは生活が成り立ちません。食費以外にも教科書代や通学品、光熱費、その他いろいろ必要なはずです。よって必然的にアルバイトをしなければ学生生活が送れないことになります。勉強どころではない学生が多いのは想像がつきます。
日本の高等教育への投資の低さ
次の図表をみてください。日本の高等教育の財源における公的支出の負担割合はOECD各国の中で下から二番目という惨憺たる状況です。これは主に家庭に対して経済的負担を強いていることを意味します。高等教育への投資は「未来への投資」のはずです。高等教育を受けた若者が、将来社会で活躍し、収入を得て税金を支払う。この循環がない限り日本の未来もありません。
欧州諸国は無料の国も
一方、高等教育は社会が責任をもって提供するという理念が確立されている、ドイツやフランスのようなヨーロッパ諸国では、大学に入学金や授業料も存在しません。年間数万円の登録料で終わりです。それでは、財源はどこからくるのかというと国が負担します。国が将来の発展のために投資しているということです。公共投資といえば、道路や橋、港や空港をつくるようなイメージがありますが、有形資産ではなく、ヒトという無形資産への投資が大切な時代です。この辺で私たち一人ひとりがそのことに気がつき、行動していかなければいけません。