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洗脳されない環境問題③ – プラスチック 編

プラスチックは我々の生活には欠かせない素材になっています。簡単に割れないほど丈夫だし、長持ちするし、加工も簡単そうだし。シャンプーの入れ物、カップ、文房具、電化製品、着るもの、履くもの、ほとんどがプラスチックです。食品も今はプラスチックの入れ物に入っています。コロッケも今はトレーとかに入っています。

プラスチックは非常に便利なもので、私たちの生活にはなくてはならないものですが、今、世界的にプラスチックはけしからん、という声が大きくなってきています。その原因は、海ごみでプラスチックが占める割合が多いということに起因しているからでしょう。ウミガメがプラスチック製のストローを鼻に詰めてしまって泣いているとか、プラスチック製のロープが絡まっているとか、レジ袋が海に浮いているとか。だから、プラスチックはけしからん、と。

でも、プラスチックがなぜダメと言われているかの研究は、大きなプラスチックが対象ではありません。大きなプラスチックは、目に見えるから、その大きなプラスチックで、野生生物が被害を被っているから、私たちに訴えやすいし、見せやすいのでしょうね。でも、プラスチックの問題は、小さい小さいプラスチックの挙動なのです。一般的に、5mm未満のプラスチックをマイクロプラスチック、0・1μm未満のプラスチックをナノプラスチックと呼びます。5mmという大きさは、定規もあるので感覚としてわかりますが、0・1μmとはどのくらいの大きさなのでしょうか。髪の毛の幅が、60μmと言われてまして、アルミホイルが20μmと言われてますので、その厚さよりも薄いです。京都や金沢とかに、金箔のソフトクリームが売っていますが、あの金箔の厚さがちょうど0・1μmと言われています。と言っても、あまりピンと来ないかもしれませんね。あの薄い薄い厚さの大きさのプラスチックが問題を起こしてるということです。

ちなみに、10cm四方の金箔がソフトクリームに乗ってるとすると、値段としては、その乗っている金箔が24Kの純金と考えた場合で150円弱です。でもあの金箔は全くの純金とは思えないので、もっと安いと思います。ソフトクリームが大体一個900円くらいなので、金箔を使っても、全然利益はありますね! くれぐれもあの金箔を集めて、儲けよう! なんて思わないでくださいね。金銭的には損するだけです。ソフトクリームばかり食べてると体にも悪いので。金は、展性(伸びやすい)に飛んでいるので、叩いて叩いて叩きまくってそこまで薄くできるってことですね。

だいぶ横道に逸れましたが、ナノプラスチックはそれだけ小さいってことです。環境に捨てられたプススチックは、紫外線の影響や、水に流されることによって、バラバラになっていき、小さくなっていきます。先ずはマイクロプラスチックになって、さらに細かくなってナノプラスチックになっていきます。この小さくなったプラスチックは、環境中を彷徨い、やがて人間の鼻から呼吸器に入ったり、口から体内に入ったり、皮膚を浸透して体内に入ったりします。

また食品や工業製品を通じて私たちの体に入ってきます。今、このような小さなプラスチックがどのように私たちの体に到達し、どのような影響をもたらすのかが、大きな研究テーマの一つとなっています。このように従来のプラスチックは小さくなってもなかなか分解しないで環境中を彷徨うので、分解しやすいプラスチックを作ろうとして作られたのが、生分解性プラスチックです。これはごくごく簡単にいうと、石油由来のプラスチックを分解しやすくしたプラスチックのことです。

一方、分解に重きを置いたものではなく、燃やした時に二酸化炭素の排出がないのを売りにした、バイオマスプラスチックもあります。これは、コーンスターチなどを使って作る植物資源由来のプラスチックです。だから、環境中で分解しやすいのか? という話になると、そうでもない、ということになります。この二つを合わせた総称を日本では、バイオプラスチックと言います。なんかややこしいですね。バイオプラスチックという大きな範疇に、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックがあるという感じです。しかし、この分類は日本国内向けらしく、海外では、バイオマスプラスチックというのはなく、バイオプラスチックと生分解性プラスチックだけになっています。

現在使っている、石油由来のプラスチックが分解しないから、ウミガメをいじめたりして生態系に悪影響を与えてるという認識の下、自然に優しい植物由来のプラスチックを開発したり、環境中で分解しやすいプラスチックが作り出されているのですが、これらが本当に環境にいいのかは分かっていません。生分解性プラスチックも、実験室では完全分解するようですが、実際に環境中に放たれて、土の中や、海の中で完全分解するかどうか分かっていないし、分解するとしても完全分解するまでどのくらいかかるかは分かっていません。むしろそれらは大きな研究テーマになっています。

冒頭でも述べましたように、生分解性プラスチックは分解しやすいように作られたプラスチックなので、生分解性プラスチックの方が一般のプラスチックより分解が早く、一般のプラスチックより速くマイクロプラスチックやナノプラスチックになるので、それがかえって私たちに悪影響を与えることも危惧されているのです。ここで、私たちが理解しなければならないことは、物はそんなに簡単に分解されないということです。ちょっと専門的になりますが、分解という言葉に騙されてはいけないです。分解と聞くと、空中分解や分解バラバラを想像して、何かが木っ端微塵にバラバラになるということを連想しますが、実際はそうではないし、完全に分解バラバラにならないことの方が多いのです。分解には、完全分解と部分分解というのがあり、完全分解は、例えば、プラスチックが、二酸化酸素、水までに完全に分解されることを言いますが、そこまではこの自然環境中ではなかなか到達しないのが現実です。もちろん、エネルギーをかけてこれらの物質を燃焼してやると完全に分解されます。燃焼すると完全分解は簡単です。 でも、特に自然下に置いては、むしろ完全分解される方が珍しいし、時間もそれ相当かかるでしょう。この完全には分解されない分解を『部分分解』と言います。自然環境中では、ほとんどが部分分解でしょう。完全に分解されない状態で、一部分が分解された状態です。この元々の物質から一部が分解された状態の物質を『中間代謝物』といい、これが結構ややこしいし難しいのです。微生物によって、分解経路も違うし分解経路が違うとその途中で生成される中間代謝物も違ってきます。バイオプラスチックも自然環境下ではどのように分解されているか、どのくらいで分解されていくのかは、分かっていません。これは、本当に大きな研究テーマです。だから、従来のプラスチックは環境に悪いからと、バイオプラスチックが出来てきましたが、これらもじゃあ環境にいいのか? と言われたら、まだまだ「はてな?」です。そんなことより、従来のプラスチックもいいところがたくさんあるのですから、使った私たちが、ちゃんとごみ箱に捨てる、散らかさない、環境中に廃棄しない、ということが環境にとってもっといいことだと思いますし、大事なことだと思います。

洗脳されない環境問題(立田真文 著・アメージング出版)より

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