pickup
洗脳されない環境問題⑥ –  下水道  編

下水道は、我々の生活に無くてはならないものです。普段重要さに気づかず、当たり前になっていますが、その役割は大きなものです。下水道は現代社会にとっての予防の医者であるとも言われます。なぜなら下水道がなければ、確実に不衛生になり、伝染病が蔓延するようになります。日本には、「水に流す」と言う言葉があります。これは、「なかったことにしよう」と言う意味で、悲しみや忘れたいことを、水が持って行ってくれる、と言うことなのでしょう。大阪を歌った歌で「悲しい色やね」と言うのがあり、その歌詞にあるように、まさしく、水が綺麗にしてくれると言う意味ですね。これから見ても、我々の基本は湿式洗浄なのです。水を使って綺麗にする、これは湿式洗浄と言われていて、その反対が乾式洗浄と言われ、水以外の例えば砂とかを使って、綺麗にする方法です。世界中のトイレを見ると、どちらかがわかります。

日本など水が比較的多いところは湿式で、水で流して綺麗にします。日本も昔は、トイレのことを厠(かわや、川屋とも)と言われていて、川の上に作った小屋からトイレをすると、川にぽっちゃんと落ちるようになっていました。今はあまり見かけないかもしれませんが、トイレのことをWCというときもあります。これは、Water Closetの頭文字のWCから来たもので、水の小部屋(クローゼット)の意味です。まさしく、厠ですね。

一方WCの反対はDCでDry Closetの頭文字です。Dryは乾燥という言葉で、水を使わないという意味ですね。だから、乾式の小部屋という意味でしょうか。DCが示しているように、水に恵まれていない地域や、山の上などのでは水の代わりに、トイレをすると砂や土を被せて処理をする乾式方法がとられます。湿式と乾式について言えば、人間の埋葬方法とも関連してます。トイレと同列に人間の死を扱うことに、お咎めを受けるかもしれませんが、どちらも我々にとって必須である生物の摂理と考えて述べさせてください。

日本は人間の遺体は、土葬か火葬です。土葬のことを法律では埋葬というようです。埋葬は日本の法律では禁止ではありませんが、都市の条例によって禁止されているところがありますから、どこでも土葬ができる訳ではないみたいです。結局、日本は土葬か火葬という、前述の分類からすると乾式法ですが、世界には水葬、風葬、鳥葬とあるようです。水葬は川や海に葬る方法で、風葬は僕らにはあまりピンと来ないですが、雨風に晒して、体が朽ちて自然に還るようにする方法のようです。鳥葬は人間の遺体を鳥に食べさせる方法のようです。水葬以外は乾式法というのでしょうか。話を下水道に戻すと、日本は綺麗にするという行為を水に大きく頼っていることがわかります。でも、世界的に見ると、それが当たり前ではないこともわかります。下水道はあらゆるものが入って来ます。僕は下水道というシステムには大賛成ですが、社会の流れとは逆行してるなあと、考えるときもあります。それは、よく聞かれたフレーズですが、「混ぜればごみ、分ければ資源」という言葉です。なるほどそうなんです。いろんなものを混ぜれば、ごみになってしまう、でも、分ければ資源として利用できる。だから、私たちは学校でも、ごみの分別を習ってるし、地域でも分別されたごみを曜日ごとに集めているのです。

しかしよく考えてみてください。この下水道、なんでもかんでも一緒くたに流してますよね。キッチンからの廃水、トイレからの廃水、風呂の水も流して薄くしてしまってるし・・・雨水も入っている場所もある。もっと言えば、うんこもオシッコも一緒くたに流している。うんことおしっこは、折角体の中では綺麗に分けられていたのに、わざわざ一緒くたにして下水道に流してしまっている。本当なら、うんこはうんこで、おしっこはおしっこで、別々に回収して処理した方が処理の効率も絶対いいのですが。おしっこはアンモニアの臭いを取るだけでも、いい肥料になるのに、わざわざうんこと混ぜてしまってるから、また1から分離しなければなりません。実際、うんことおしっこを分けられる便器もあるのですが、一般的には使われていません。うんことおしっこを別々に回収するには、別々のパイプが必要になりコストが高くなるので、じゃあ一緒くたに回収しましょう、ということです。みんな、ごみは分別してるのに、下水については一緒くたが当たり前になっていて、ごみの分別を声高に叫んでる人も、下水道については何も疑問を生じない・・・世の中って不思議ですよね。

そのいろんなものが流れてくる下水道ですが、いろんなものが流れてくるから資源の宝庫と言われていて、そこから資源を取り出そう、という研究が盛んです。下水からは、ミネラルをとったり、リンや窒素、アンモニアを回収したり、アルコール、ビタミン、メタンガス、金属類、有機肥料成分なども回収する試みも行われています。

洗脳されない環境問題(立田真文 著・アメージング出版)より ※一部編集

おすすめの記事