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「カロリー制限」よりも「糖質制限」

京都市に糖尿病治療で圧倒的な実績を作っている高雄病院があります。そこで行われている食事療法の基本は次の二点です。

  • ご飯やパンなどの主食やいも類など、糖質の多い食品をほとんど摂らない
  • 肉や魚、油ものなど、脂肪分やたんぱく質の多い食品は好きなだけ食べてもいい

今までの常識からすると、何とも意外な食事療法ですが、実践した患者さんの多くは、糖尿病が改善しています。しかも即効性があるといいます。これはまさしく最近話題の糖質制限食になります。詳しい内容は、江部康二『主食を抜けば糖尿病は良くなる!〔新版〕』(東洋経済新報社、2014年)を参照いただきたいと思いますが、ここで簡単に解説いたします。

糖質とは炭水化物に含まれていますが、正確に理解するには次の式で覚えるといいでしょう。

「糖質+食物繊維=炭水化物」

すなわち、炭水化物から食物繊維を除いたものが糖質となります。この糖質を摂ると、その後血糖値が上がります。そして、この血糖値の上昇が血管を傷つけることにつながります。すなわち、血糖値が200を超えると血管内皮に傷害が起こり、そのため、血糖値が高い時間が長いほど、血管性の合併症の危険が高まり、心筋梗塞や脳梗塞などが起こりやすくなります。ですから、糖質の多い食事をとると食後高血糖になり、それが血糖値200を超えている間はずっと血管を傷つけていることになるわけです。

これに対して、従来の糖尿病でやり玉に挙げられている脂肪を多めに摂ったとしても、食後血糖は上昇しませんので、血管内皮の傷害は起こらないことになります。よって、糖尿病患者にとって危険視すべきは、食後高血糖を引き起こす糖質であり、脂質ではないということになります。従来のようなカロリー制限や低脂質よりも、糖質制限こそが食事療法のカギだといいます。

人が糖質を摂ると血糖値は急激に上昇しますが、即座にすい臓からインスリンが分泌されて、これを下げようとします。要するに血糖が上がると人体は急いで、インスリンを分泌して下げようとし、血糖値が高い状態、すなわち血管に傷害を与える期間をできるだけ短くしようとするわけです。本当に人の体はうまくつくられています。

高雄病院では、糖尿病の根本は糖質処理システムの異常にあり、その治療の基本となるのは糖質代謝をつかさどるすい臓を休ませることだと考えています。この観点からすると薬物療法よりも糖質制限食のほうが、実際の治療面で有用だといいます。従来の常識にとらわれず、科学的なデータや臨床によって実績を作り続けている江部氏の取組みは注目に値すると思います。

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