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年収が低くても幸せに生きるコツ

 突然ですが、「年収90万円で東京ハッピーライフ!」と聞いて、驚く方はいらっしゃいますか? 同時に「え、普通に考えて無理じゃない?」と思ったのではないでしょうか? 年収90万円ということは、月7.5万円ということになります。しかも東京。そんなことできるのかと不思議に思う衝撃的なタイトルですが、今回はそんな本をご紹介いたします。「年収90万円で東京ハッピーライフ」です。年収90万円で東京ハッピーライフならば、きっと考え方や捉え方によってはどこに住んでいたってハッピーライフを実現できるはずです。

さて、この本の著者である大原扁理さん、20代後半にして隠居生活を送っています。必要な生活費は7万円で5千円残る生活。仕事は週に2回だけ、介護の仕事をしています。そのほかの5日は休みで、図書館で読書と1時間の散歩をしながら生活をしています。まさかの週休5日。とってもスローライフです。このような生活を始めるに至った経緯をお話しします。

大原さんは愛知県の決して裕福ではない家庭に生まれました。学校はヤンキーが多くいじめに遭っていたそうです。高校からバイトを始めますが、単人作業は得意でも、複雑な作業が苦手で、毎日のように怒られていました。高校卒業後はバイトを続けながら引きこもるようになり、誰とも話すことが無くなったためか言葉が出なくなってしまったそうです。これはダメだと感じ、急に貯めていた100万円を使い、ロンドンやニューヨークに行きます。すごい行動力でびっくりですね。海外では観光することもなく、スーパーで働きながら図書館で本を読むという、まったく変わらない生活をしていました。そこで大原さんは「どこへ行っても暮らしは変わらない」ということに気づきます。そしてすぐ帰国し東京に住み始め、どこへいても生活が変わらないのなら郊外でもよいのでは、ということで東京の郊外で20代後半から隠居生活を始めて今に至るのです。

大原さんは、低収入で仕事もうまくできない自分でもできる生活なのだから、ベストとは限らないかもしれないが、誰にでもできる暮らしなのだと述べています。でももし、今苦しくて辛い生活をしている人がいるなら、こういう暮らし方もあるのだということを知ってほしいから本を書いたといいます。著者は「稼いでいい暮らしをすることが正しい」という多くの人が無意識に持つビジョンに疑問を早くから感じていたのですね。

暮らしていくうえでの衣食住のポイントも綴られていますので、気になる方はぜひ実際に手に取って読んでいただければと思います。実践している生活スタイルも具体的に書かれているので、1つでも皆さんの参考になるポイントがきっとあるはずです。

そして、著者の大原さんは、「多くの人が夢に対する考えが間違っている」といいます。最近「好きなことで生きていく」という言葉が増えてきているように見えますが、大切なのは、好きなことで生きるのではなく、「嫌いなことをして、死なない」ということだそうです。「省く精神」が大切だと述べています。苦手なこと、やりたくないことを明確化する方が、やりたい事・好きなことを見つけるよりも簡単ではありませんか?「栄光と成功を確保する」のではなく、「居心地とストレスフリーを確保する」のです。これって、結構大事なことかもと本を読んだとき時筆者はとても納得しました。皆さんはどうでしょう?やりたいことが見つからないと悩む方がたくさんいらっしゃるかと思いますが、これはやりたくない、これは苦手だという自己理解をした方が、自分の生きやすいワークスタイルやライフスタイルが見つかるきっかけになるのではないかと思うのです。

それは人間関係にも同じことが言えます。大好きな人に囲まれることも大切ではありますが、なかなかその状態にあることはできません。そうではなく、苦手な人、嫌いな人がいる環境の中に、なるべく身を置かないことの方が大切です。

お金の管理の仕方も面白く、お金を擬人化して扱うのだそうです。つまり、頑張って稼いだお金をなんにでも使ってしまうのではなく、よく吟味してこの大事なお金を使うに値するものなのかを考えるそうなのです。とっても面白いですよね。稼ぎ方も逆算して行うのだといいます。

そんな生活の中での心の持ちようですが、多くの人は漠然とした謎の不安を感じながら生きていますが、大原さんはその不安を「なんとかなる」と楽観視することを大切にしています。世間体は一切気にしないというマインド。見習いたいくらいかっこいいと思いませんか?人間は繊細なもので、ただ天気がいい日には「何かをしなきゃ」という焦りに襲われることがあります。そして何もできなかったと凹んでしまう。そんな日も大原さんにもあるようで、そういったときにいちばん大切な時間が「とにかくボーっとする」です。このボーっとする時間を確保することで、自分の中に耳を澄ませることができます。自己観察、自己理解、自己覚知につながっていくのです。外に求めるのではなく、自分がどうしたいのかを、自分の内側と会話することが重要なのだといいます。

ここまで著者・大原さんの暮らしをご紹介してきましたが、皆さんはどう感じましたか?ここまで心地よい暮らし方と生き方を自分なりに追求した人はなかなかいないのではないでしょうか。前述したとおり、著者は自身の暮らしやマインドを発信することで、とにかく自分のような暮らしをしている人がいるということを、今苦しさを感じている人たちに知ってほしいという思いでこの本を書かれています。暮らしというものには正解はありません。だからこそ悩んだり何度も方向転換するものなのだと思います。けれど、皆さんの暮らしの足元にも幸せは潜んでいるはずです。きっとハッピーライフはその小さな幸せに気づくことが何よりも大切なのかもしれませんね。

参考文献:「年収90万円で東京ハッピーライフ」著者:大原扁理 出版:太田出版

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